そのとき、時が動き出した。 [オトナのどうぐ]
むかし、むかし、あるところにくろすけさんとしのさんがいました。
ある夜、くろすけさんは夜遅くまでおきていました。しのさんはベッドで白河夜船。ぱちぱちと勢いよく燃えていた薪も燃えつき始め、夜も更け行く頃、くろすけさんは仕事を放棄して、「不思議な少年」を読んでいました。
「あーあ。仕事をしてると時間ってたつのが遅いのに、漫画読んでると時間ってすぐに過ぎちゃうよな」
さて。くろすけさんは怖がりです。初めてしのさんと一緒にひとつき過ごしたあと、飛行機に乗って遠いお国に帰るしのさんに
「飛行機の中で読むといいよ」
と言って「八墓村」と「犬神家の一族」の漫画をあげました。飛行機から降りたら捨てていいから、と。事実はこの怖い話が自分の部屋の中にあると思うだけでくろすけさんは夜に怖くて寝れなかったりしていたそうです。
そんな怖がりのくろすけさんなので、「不思議な少年」も十分に怖い話だったようです。
この中の時を越えさまざまな時代に降り立つプラトンの話を読んでいたときです。時刻は深夜3時を回った頃だったでしょうか。
突然、頭の上からカタカタカタ・・・とかすかな物音が聞こえてきたそうです。なんの音かと思って見上げると・・・
壁にかかっていた時計がいきなりすごい勢いで時を刻みはじめているではありませんか。ひやり、と恐怖がくろすけを包み込みます。手足が気がつくと冷え切っています。
「こんな漫画を夜中に読むから・・・! 時間が・・・早く過ぎ始めちゃった・・・!」
くろすけさんはパニックをして半泣きで漫画を閉じ、電気を消し、いとしのしのさんを探してベッドルームに駆け込みました。ああ、もし、しのさんがいなかったらどうしよう。時間が・・・時間が・・・!
もちろん、ベッドの中にしのさんはいて、ほっとしたくろすけさんはベッドにもぐりこんで、しのさんにしがみついてうぇーん・・・と泣いたのでした。そしてそのまま泣き寝入りをしたのでした。
****************
で、翌朝、くろすけが半泣きになりながらその話をしてくれて、笑ったのなんのって。申し訳なかったんだけど、笑っちゃいました。
実は、薪ストーブのある部屋の壁にかけてある時計はラジオ制御なのです。なので、時折、夜中なんかにそうやって勝手に時間を合わせているようなんですね。まさか、こんな事件が起きるとは思っていなかったのでびっくりでした。
今日、時計の電池を入れ替えたら自動時刻あわせをはじめたのを見て急に思い出した話です。
くろすけはそのあと、「不思議な少年」を手に取ることはありませんでしたとさ。
とっっぴんぱらりのぷ。
ちなみに、くろすけがくれた漫画本は事実上の初めてのプレゼントなので、大事に今でも持っています。
いや、これ、何も知らないでいて、夜中にいきなり時計の針がグルグル回りだしたらマジ恐いから!日常ではありえんから!!
しかもプラトンじゃなくて、人殺しの話読んでたんだよ・・。闇・・・
おばあちゃんになっててもいいからしのがベッドの中に居てくれますようにーって祈るような気持ちだった。笑
by くろすけ (2007-10-29 01:43)
かわいそうだったよね。
とりあえず、わたしが布団にもぐりこんで寝る癖がなくてよかったよ。
ぱっと見て見えなかったらそれこそ本当に恐怖だよね。
ちなみに、そのときに時間が進んだ分、
年をとってばあさんになってますよ。
by しの (2007-10-29 01:57)
ホントにグッド、いえいえバッドなタイミングで時計が動いたのですね。
「不思議な少年」はなんとなく小説(マーク・トウェイン)の方かと、思ったのですが、マンガのほうですね。
おもしろいので(マンガのほう)、次々読んでほしい作品なんですが。
実は私も怖いのが苦手で、本も置いとけないたちです。
by いるか (2007-10-29 08:11)
> いるかさん
一応、僕の名誉のために云っておきますと、漫画は全部読みましたよ。昼間、しのがいるときに、ですが。^^;
でもしのの家には3巻までしかなくて、続きがあるらしいです。
by くろすけ (2007-10-29 17:11)
> いるかさん
いつもコメントなどありがとうございます。
あの時計、やってくれるな、って感じでした(笑)。
YouTubeの動画がその問題の時計なのですが
見た目がアンティークなので
そんな最新技術(?)が隠れてるとは思っていなかったらしく、
くろすけは本当にびびったようです。
アンティークの時計ってなんとなくなんかありそうだもんね。笑。
4巻と5巻は年末に日本に行ったときにブックオフで探してみようと思います。
それで、くろすけの部屋において帰ったり(笑)。
by しの (2007-10-29 18:54)