またね。 [好き]
くろすけがいたこの10日間、本当に楽しくて幸せだった。
いろんなことを発見した。たとえば、インスタントのカップスープを飲むとき、マグカップから直接飲むんじゃなくて、スープを混ぜたティースプーンでずるずるって飲んじゃうこと。わたしも同じ癖があるのでなんだかうれしかった。
朝に起きるととなりにくろすけがいる。朝ごはんはお味噌汁にたまごを入れようね、と話しながらついつい仲良くしすぎて、朝ごはんがお昼ご飯になっちゃったり。
くろすけが仕事のことでちょっとつらいメールをもらったときにはとなりにいれた。くろすけの涙がぽとんぽとんとわたしのジーンズの膝に落ちてきて温かかった。
本当だったらそこそこの観光地できれいなところはたくさんあるのだからあちらこちらくろすけに見せたかったのだけれど。観光客っぽいことはせず、ふたりで過ごしていた。並んで座って漫画を読んだり。
くろすけがここで過ごす最後の夜、ふたりで割った薪を使って薪ストーブに火を入れた。部屋の明かりは落として、ゆれる焔をふたりでみていた。静かで、薪の燃える音だけが聞こえていて。となりにくろすけがいて。暖かくて。
ずっとここでふたりで暮らしているみたいだ。
くろすけを空港にまで送っていった。出発までの時間を引き延ばすようにして過ごした。二人で入った空港のカフェが「Lovejuce」なんてかなりきわどい名前なのに笑いながら。
最後の最後にあわただしくなってしまって、出国ゲートをくぐるくろすけに大急ぎでキスをした。くろすけが小さく手を振ってゲートの向こうに消えた。