櫛にながるる黒髪の [好き]
くろすけとお風呂屋さんに行ったとき。
最後に鏡の前で髪の毛を乾かしていました。くろすけがとなりに来て座って、みると髪の毛がまだぬれたままでした。
なので、自分のを乾かしたあとにくろすけの髪を乾かしてあげました。櫛もブラシも持っていくのをすっかり忘れていたので、髪を軽く逆立てるように指に絡めながら乾かしていました。くろすけは目を閉じてじっとおとなしくしています。その様子を、とても愛しいと思いました。
くろすけの形のいい小さな頭をくるくるとなでるように、髪を引っ張らないように指で梳きながら乾かしていきます。さらさらとくろすけの短い黒髪が指の間をすべるのがうっとりするほど気持ちよくて、わたしにすっかり自分の頭をゆだねて、気持ちよさそうに安心しきっているくろすけが愛しくて。
普段は意識したことがないのに、さらさらしたやわらかいきれいな髪の毛も形のいい頭も柔らかい耳も、自分とくろすけが同じ性を持っているんだと感じて、その儚さになんだか涙が出そうでした。そして、自分にとってくろすけがどんなに大事なのかを胸が痛いように感じました。
誰もいなければ、その場でくろすけを抱きしめてキスをするのに。とけちゃうくらいのキスを。
それができないので、鏡の中に映っている目を閉じているくろすけの顔をじーっと見つめていて。