高価なものがおいしいわけではない。 [ちょっとまじめに]
無事に着きました。いつもながらに空港から自宅が遠いのが疲れます・・・。飛行機の中でもほとんど寝ていて、帰りのタクシーの中でもうとうとしていて、帰って来てからもすぐに一晩爆睡して。どれだけ寝るんだって感じです。今は眠いのですが時差ぼけをしないようにおきている最中です。
くろすけと一緒にいるとなんにもしていなくてもとても幸せで楽しいです。「素敵な」お店での食事も、「絶対にはずせない」場所に行くことも、「いま話題」のあれこれをすることも、どうでもよくなります。一応、会う前にはいろいろしようとか思っちゃうんですけどね。それでも、今回は、映画も見に行ったし(Miss Potter…書くと悪口しかないので)、お風呂にも行ったし、うなぎも食べたし、たきや漁もしたし。わたしたちとしては破格の行動力でした。
それでも、おいしいうなぎ茶漬けよりも、くろすけが「マーボー豆腐の素」を使って作ってくれた麻婆豆腐のほうがずっとずっとおいしかったし、くろすけの顔を見ているほうが映画を見るよりもずっとずっと心にしみました。たきや漁だってくろすけと行ったから楽しかったんだと思うし。
帰る日の直前、TVですごく高いものと安いものの味比べをタレントさんにさせて、高いものがわかるかどうか・・・という番組をしていました。
ふぐとこんにゃくの区別がつかないのはどうかと思います。でも、それをみていて思ったのは、高価なものがおいしいものではない、ということです。
「一皿10万円の!」
「一本50万円の!」
などといわれると、それだけでびっくりして、マスコミがそれを持ち上げるとそれだけでそういうものがおいしく、そういう高価なものを口にすること(自分の日常からかけ離れたものであればあるほど)が幸せや「素敵な」ライフスタイルの証明になると思ってしまいがちだと思います。でも、その番組の中で、お酒を飲めないタレントさんが
「シャンペンなんてね、安いものが飲みやすくて、高いものになればなるほど飲みにくいんだよ」
と堂々と言い放たれていて、本当だなあ、と思いました。高いシャンペンなんて、実は猫のおしっこのにおいがして、苦くて、舌の奥のほうをぐにぐにと刺激をするため唾液がたくさん出てきて、それほどおいしいものではありません。かといって、わたし的には安い甘いシャンペンもかなり苦手ですけれど。CAVAの黒ラベルのビンテージもの(こっちで買うと一本1000円くらいかな)がドライで好きです。
番組の中では、ほとんどの人が高い食材を当てられなかったのですが、それは出演していた人たちの舌が鈍感だからではなく、高価な食材が一番おいしいわけではない、ということだと思うのです。高価なものはもちろんぼったくりではなくそれなりに理由があると思います。くろすけが言うように、ひとつ20円の卵とひとつ100円の卵では味に確かに違いがあります。そしてひとつ1500円の卵と100円の卵のあいだには生産手段や生産量などの違いが確実に存在して値段の差になっていますが、その差が必ずしも味には反映されていないと思うのです。
頭を絞って考えれば、そういう「高価」な食材のおいしさのほとんどは、「誰もが食べているわけではない」という自分と他人の差異とそこから生じる優越感によるものが大きいと思うのです。You are what you eatの消費文化によるゆがんだ解釈です。
皮がうまくむけないからと、半分に切ってスプーンですくってくろすけが食べさせてくれる安く買ったイチジクのほうが、わざと高くなるように仕向けて栽培をされているマスクメロンよりもずっとおいしいです(実際、マスクメロンってそんなに騒ぐほどおいしくないと思うし。とくに生ハムメロンは最低だと思う。あれはあんまり甘くない安いオレンジ色のメロンと食べるとおいしいのであって、マスクメロンなんかと食べるもんじゃないよ、ぷんぷん)。もっとおいしかったのは、くろすけと一緒に散歩をしていて見つけて木からもいで食べたみかん(みかん泥棒じゃ)の味だし。ただほど高いものはないっていうから、これはすごく高価な食材ですな。
まあ、高価な農作物はそれを作るにはそれなりの理由もあるし、そうしなければいけないのも知っているので、そういうものを生産するなって過激なくだらないことは言うつもりはないんです。それにそれをおいしいと主張してお金を湯水のように使うのも、その人の勝手だと思うしね。
でも、わたしにとって一番おいしいのはくろすけと一緒に食べるご飯であり、呑むお酒なんだな、と思いました。それでも、ひとつ20円の卵よりは100円の卵のほうがおいしいし、無農薬有機栽培の野菜をできるだけ食べたいと思います。一緒にいる幸せと、自分にとっておいしいものの線形結合を計算して、その値が示すものは必ずしも一番高い食材や、高価なレストランのメニューではないってことかな。そして、いくらおいしくともお酒はやっぱり控えめに(自戒をこめて。笑)。
・・・こんなことを、時差ぼけ頭でくろすけの寝息をスカイプ越しに聞きながら考えているわけです。
うちも同じ様な遠距離恋愛で年に数回の逢瀬ですが
彼女さんから同じ様な事を言われます。
美味しい物を食べさせて、喜ぶ顔が見たい
小汚い部屋より、夜景のきれいなホテルと
色々考えて計画をねっているのですが
結局は、部屋を掃除したり、料理を作る方が
本当は嬉しいようです。
まぁ結局は、いちゃいちゃできれば何処でも良いのですがw
by へろーめ (2007-10-21 10:08)
高価なものの味を知っておく、っていうことには興味あるけどね。
でもスコッチのシングルモルトとか翌日大変なことになるから、僕は安ウィスキーでいいや。笑
僕にとってはなによりもしのがおいし・・(以下略)。
by くろすけ (2007-10-21 12:03)
しのさん、お帰りなさい♪
『食べ物』って、目で見て、香りを楽しんで、最後に舌で味わうんですよね。
だから、私も『必ずしも”高価=美味しい”訳ではない』と思っています。
何がどう美味しいのか、それが分かるようになればいいんだと…。
すごく納得のエントリーでした!
by 綾 (2007-10-21 17:24)
> へろーめさん
喜ばせたいなって思ってもらえるだけで十分なんです。そりゃあ、夜景のきれいなホテルの部屋や豪華なコース料理なんかはブログに書いたり友達に自慢したりできるので、手っ取り早く「愛されている」実感を他人との比較で測りやすいとは思うのです。「こんなにしてもらえた」って感じで。でも、それって結局は常に「もっともっと」って言う飢餓感しか産まないように感じています。それに二人の関係が非日常になってしまって、浪費とかあまりありがたくないものを生むように思うし(って、ばばぁ心のおせっかいですけど。笑)。
結局は、青い鳥は自分の部屋のなかにいるんだし、どこでもいいから二人でいちゃいちゃできればそこが自分の幸せの場所なんだな~ってつくづく思います。少し前のコメントでおっしゃってましたけれど、本当に日常の何気ない瞬間に幸福はさりげなく微笑んでいるんですね。まあ、できれば、蚊がいなくて10月には涼やかさを感じる気候であってほしいと思うのですが(浜松は10月なのに蒸し暑くて蚊がいたんです・・・涙)。
by しの (2007-10-22 00:45)
> くろすけ
高価なものの味ってさ、たいしたことない、って言うのがわたしの本音。値段に恐れ入っちゃって変な味でもありがたがってるだけじゃないかなあ。生ハムメロンとか(←まだ言ってる。笑)。ま、好みもあると思うけどね。高価なもので文句なくおいしいのはキャビアだなー…。でも、あれもイラン革命とかソビエト崩壊とか以前はいまほど高くなかったのよ。純粋にチョウザメがいなくなって高くなってるだけだと思うな。
ウィスキーはシングルモルトがおいしい。安ウィスキーもそれなりにおいしい。うん。
by しの (2007-10-22 00:45)
> 綾さん
ただいま帰りました~。
誰かが「これがおいしい」って言うんじゃなくて、自分が何をおいしいと思うのかが大事だと思うんです。実はけっこうおいしくないのに「これがおいしい」って言われて無理に思い込んでるものが多いんじゃないかなあとか思っていたり。人それぞれ好みもあるし。思い込みじゃなくて自分の舌で味わいたいです。
by しの (2007-10-22 00:45)