メルヘンの話。 [ちょっとまじめに]
わたしには息子がいる。今度13歳になる。健康な男子だ。
わたしには家がある。小さい家でプライバシーの保てる部屋はひとつしかなく、そこがわたしの部屋になっている。あとは、台所と居間、居間を通り抜けたところに風呂場と便所、屋根裏の階段を上がったところにオープンスペース、そこを通り抜けるとわたしの部屋。
息子は水曜日の夜に泊まりにくる。そして、週末の金曜に来て、日曜の昼に父親の家に行く。その間、息子は下の居間にあるソファーベッドで寝ている。わたしと過ごしているとき彼のプライバシーはない。
息子に会える距離にいるために、わたしはくろすけと一緒に暮らすことを先延ばしにしている。息子が18歳になったら、今いる町に住み続ける理由は一応なくなる。18歳になったらケツをけって独立させるつもりだ。
3月の末から2ヶ月、くろすけがこちらに来る。そのとき、今のこの状態で息子を置いておくわけにはいかないということが彼女にはわからない。
13歳の息子の前をトランクスにTシャツで歩き回るといってみたり、息子の部屋がないなら三人で一緒に寝ればいいといってみたりする。
それは、息子に対して不公平だし、だいたい、はじめてみる裸が自分の母親(父親でもいいが)の恋人だというのはトラウマになる可能性が高いから避けたほうがいいといっても、そんなのはわからない、としかいってくれない。
息子が泊まっているときにセックスをするときにはわたしが声を我慢すればいいのだ、という。
息子がもっと小さければ話は簡単だったかもしれないけれど、第二次性徴が始まっていて性に興味がある息子をいらぬトラウマから守りたいというのは、わたしのわがままなのだろうか。母親が自分の父親に抱かれる声を聞くのも子供にとっては難しいだろう。それが、自分とは血のつながりのない恋人に抱かれている声だとしたら深いトラウマになることがわからないという。
性欲が出てきて性に興味がでてきている息子の前を下着姿で歩き回り、彼の性欲を刺激することが楽しいのだろうか。楽しいはずはないだろう。では、なぜ、下着姿(トランクスは立派な下着だ)で歩くなどといえるのだろう。しないで、と何度も説明してもわからないと繰り替えずばかりで。
だから、息子のために小さい家なのに無駄に広い敷地にキャンプ用のキャラバンかログハウスを建てようと思った。とにかく息子のプライベートな部屋を作ることが一番簡単だろうと思った。くろすけに話しても、わからない、としかいってもらえないから、現実的にトラウマから守れる方法を取るしかないと。
でも、キャラバンもログハウスも両方とも問題点があり、そう簡単にどちらかとは決められない。いろいろと問題点が山積みになり、少し話を聞いてもらいたかった。
それだけだったのに。自分の問題点を整理するために話を聞いて欲しかっただけだ。
もしわからないなら、そういう事実があると受け入れて欲しかっただけだ。
くろすけはわたしと一緒にいたいだけで、それが本心だという。そんなのはわたしも一緒だ。
じゃあ、本心にだけ従って生きていけばいいの?
わたしにはそれはできない。わたしはくろすけと一緒にいたいけれど、同時に息子をいらぬトラウマからも守りたい。すでにわたしの離婚やカミングアウトで、本人は飄々としているけれどそれなりのトラウマを受けているであろう息子を。
くろすけに子供がいないことは知っている。だから、母親の気持ちを理解しろといっても現実感を持って一体感を持って共感をすることはできないかもしれない。でも、少なくとも、性欲が充満しつつある13歳の子供の視点から自分の親の恋人の下着姿を見て性欲が刺激されるということが笑える状況ではないことはわからないのだろうか。
わからないのかもしれない。世の中にはそれを笑い話としている漫画やドラマがたくさんあるから。
それなら、そういうことになるというわたしの言葉を事実として受け入れることもできないのか。わからないから、といってその状況にたいして苦しんでいるわたしを「わからないもの」としてそこで終わらせてしまうのか。理解させてくれといわれても、どう説明をすればいいのかわたしにだってわからない。ただ、自分の今までの経験(教えてたこととかいろいろ)で、そうなるという事実を知っているに過ぎないのに。
息子には、くろすけとわたしが性的関係にあることは話してあるし、女同士でどうするのだと聞かれたので指を使うんだ、ともはなしたことがある。
そういう話を聞くことと、実際にそれを目の当たりにしてしまうことは違うということがわからないのか。わからないのならば、目の当たりにすることがトラウマにつながるというわたしの言葉を事実として受け入れてくれることはできないのか。そして、わたしが息子を心配していることを受け入れて、わたしに協力をしてくれと望むことはわがままなのか。
自分はしのといたいだけだ。そういう本心に従って行動する、というのは美しい。美しすぎてメルヘンみたいだ。
でも、そのメルヘンゆえにわたしは自分の息子にトラウマを与えることはできない。
自分の本心に正直でいたい。それと同時に守るものを守りたい。だから、いろいろと手を打とうとしているのだけれど。現実問題としてそう簡単ではないから、あれこれと考えて悩まないといけないのだけれど。
そして、いろんな問題についてわからないからストレスがたまってるから話を聞いて欲しかっただけなのに。
それもこれも、くろすけと一緒にいたいからなのに。だから、いろんな現実問題を考えて、自分に見えていない問題があるかもきちんと考えて一番いい解決法を早く見つけようと思ってるのに。息子も傷つけないように。
本心にだけ従って美しく行動しないわたしが薄汚れた日和見主義者みたいに思えてきた。
なんだか、くろすけに息子のことを伝えようとしても、自分はわからない、と拒絶されるばっかりで、気がめいっているので、つらつらと思うままにかきました。不愉快に思われる方がいたら申し訳なく思います。子供を最優先すべきだという意見もあるかと思います。でも、わたしはくろすけと一緒にいたいのです。2ヶ月一緒にいれるというのはわたしにとって信じられないくらいうれしいことなのです。でも、息子もわたしにとっては大事なのです。両方を取ろうとすることがそもそもの間違いなのでしょうか。
上手く言えませんが、社会は大人が権力を握ってて、金銭も権力も持たない子供は思い通りの環境を選べない。
子供は大人が作った環境の中でしか選択肢がない。
親が子供の環境を守らなくて誰が守ってくれるというのだろうかと思う。
大人が子供を守らなければ、子供の環境はドンドン俗悪になる気がする。
何が正しいかはそれぞれがけれども、しのさんの気持ちがわかる気がして、思わず書き込みしてしまいました。
by hikari (2007-02-21 22:24)
あのね、僕は息子さんの前でセックスするなんていってない。前回行ったときだって、しのの気持ちを尊重して息子さんがいるときにはしていないし。トランクスで歩き回るとかだって、冗談としては言うけど、本当にするほどルーズじゃない。息子さんは僕にとって他人なんだからね。
しのは僕のそういう人間性を疑っているわけではないと思いたいけど。
それで、キャンピングカーかログハウスかという問題については、お金だけの問題でログハウスを建てるのに躊躇しているようだったから、息子さんに部屋は必要なんだし貯金はあるんだからログハウス建てたらっていったんだ。それでもまだなんだかんだと渋っているから、そんなに難しいなら僕は台所で寝たって外のテントで寝たって雑魚寝だっていいって言っただけ。
母親の彼女っていうのがそんなにトラウマになって、それでそんなに息子さんから遠ざけたくて、キャンピングカーもログハウスも難しくて、週の半分預かるのもやめられなくて、僕が外に家を借りるっていってもお金がかかるからだめって、もう来るなってことかね?
まあそういってるけどさ。
そういわれても僕は行くけど。
幸い大人だから寝袋買ったら羊とだって寝れるしね。
by くろすけ (2007-02-21 23:29)
こんにちは。以前sappho2006と名乗っていた者です。
ブログ新装開店のご挨拶にうかがうつもりが、大変な時にお邪魔してしまったようで・・・。時を改めようかとも思いましたが、どうしても他人事とは思えず、コメントを残させて頂きます。
私も、10代はじめの頃、しのさんの息子さんと似た状況に置かれたことがあります。諸条件はかなり異なっているし、そもそも、私の感じ方は、しのさんの息子さんのそれとは全く違うかも知れませんが・・・。
しのさんの言葉を読みながら、もしかしたら、あのころ私の母親も、こんな風に私のために苦悩してくれたことがあったかもしれない、と思い、涙が出ました。だとしたら、私は彼女に随分酷いことを言ってしまったなあ。でも、だとしたら、嬉しいなあ。そんなアンビヴァレントな気持ちです。
しのさんの想いが、きちんと息子さんにも伝わるといいな。大きなお世話とは知りつつ、そう願わずにいられません。
勝手なことを書いてしまいまして、ご不快な思いをおかけしたら申し訳ございません。
by coochin (2007-02-22 03:14)
コメントありがとうございます。
>hikariさん
子供は自分の環境を選べないですよね。本当に。親は子供の環境を守る義務と自分を幸せにすることの間で最善の方法を探るしかないように思います。親が自分を犠牲にしてまで子供の「ため」に環境を守ることについては良くわかりません。親が不幸だったら、その環境は果たして子供にいいのかな・・・とか。
難しいです・・・。
>くろすけ
ごめん。こういう感情的なコメントには返事ができません。
ただ、くろすけは常々、自分の言葉には責任を持つ、その言葉が嘘になるような無責任な発言はしないといっていたのでしょう。ビールが10リットル飲める、といったとき、それを検証するために自分で10リットル飲んで死んでもかまわない、その場合は自分の言葉が嘘じゃなくて間違いだったことになるだけだからって。
それに、くろすけを遠ざけるとはいっていません。息子がくろすけに会うことはいいことだと思っています。
>coochinさん
新装開店おめでとうございます。こちらこそ、せっかくご挨拶に来ていただいたのに、ちゃぶ台がひっくり返り茶碗が中を飛ぶ茶の間無重力状態真っ只中で申し訳ありませんでした。
最新の記事を拝読して、お母上とのさまざまなことがあったのだなあと拝察いたします。そうですね・・・性別の違いもありますし、感じ方は違うのだろうと思います。息子が女の子ならもうちょっとことは簡単だったのに、とも思っています。
coochinさんのお母上の胸中はわたしの想像の域を出ませんが、わたしの記事がなんらかの形でお役に立てたのであれば幸いです。
息子はたぶん、わかってくれていると思います。奴は飄々としていてあんまり文句とか言わないんですけどね。
温かいお言葉をありがとうございました。
by しの (2007-02-22 22:14)
>しの
冗談と嘘は違うと思うけど。
それから、僕がどうして感情的になっているかということについては考えてくれているんだろうか。僕はいつでも、しのの感情的な部分も受け入れたいと思っているし、しのもそうなんだと思っていた。
by くろすけ (2007-02-22 23:54)
わかってるけれど、わたしにも限界があるんだよ。
by しの (2007-02-23 02:29)