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分岐点その2 -仕事か彼女か [追想]

しのと付き合いはじめた頃、僕は学会の発表を目前に控えていて非常に忙しくしていました。発表までひと月をきっていて、データを取りつつデータ解析のためのプログラムを走らせた状態でしのと食事をするために研究室を抜け出したりしていたのですが、どうしてもしのと会える時間は夜遅くになることが多かったです。一緒に会っても僕はアルコールは飲まずにしのが寝た後で論文読んでたり・・。


そんな忙しさもピークに達した発表前日、僕はまだポスター作成中で、共同研究者との打ち合わせなどがあって学会会場と研究室を行ったり来たりしていて、メールをチェックする時間もありませんでした。夜9時をまわってもまだ終わらず、指導教官と打ち合わせをしていました。そしてデータを取りに自分の部屋に戻りパソコンを見ると新着メールが来ています。しのからでした。



くろすけなんか嫌い。
またされる身にもなって。
もう会いたくない。



あわててメールの返信を書こうとしたところ、電話が鳴りました。受話器をとると電話の向こうでしのが泣いています。何を言ってもしのは「嫌い、もう会わない。」と繰り返すばかりです(京ことばになってるんだけど萌えてる場合じゃない;)。
電話を切ることもできずに一時間程経過したところで指導教官が部屋へ入ってきて、僕が電話をしているのをみるとなにも云わずに部屋に戻っていきました。
その後少しして、しのに「ばいばい。」と電話を切られ、とりあえず僕の中では、打ち合わせを終わらせてしののところへ行き研究室へ戻ってポスターを仕上げるしかないだろう、ということで、すぐに指導教官のところへデータを持って行きましたが、指導教官は帰り支度をしています。<確かになにも申し開きができる状況ではありません;。
そして帰り際にひとこと。


いい身分だね。



すいません…。僕は指導教官の背中を見送りながら研究職をあきらめました…。


結局、打ち合わせの必要がなくなったのですぐにしのの部屋へ行き、寝ていたしのを(半分)起こして仲直りしました。学会発表にも間に合わせました。
実際には学会発表に間に合わなかったくらいで研究者になれなくなったりしないし、指導教官だって変えたらいいんですけどね。ただ、このときが、たとえ研究を続けられなくてもしのがいる人生がいい、ということを意識したはじめだったんです。


だから今では仕事がどんなに立て込んでいてもしのが寂しそうだったらしのと一緒にいることを優先させるし、しのが自分の国に来てくれというならばしのの国で生計を立てられる職を探そうと思っています。僕は自分の今の仕事が天職だと思っているし、しのもその面白さを理解してくれているので、当面は現状維持路線ですが。
それでも、僕にとっては仕事というのはしのの気持ちを犠牲にしてまで固執するものではなくなっている。いままでは付き合っている人よりもきっぱり仕事優先派だったのに、不思議です。


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