ダイヤのピアス [追想]
くろすけと出会ってから約半年後のころ、今から思えば一番つらかったくらいの時期ではないかと思います。理由はいろいろとあると思いますが、一番の理由は、くろすけのことが大好きで一生一緒にいたいと思っているにもかかわらず、元夫も愛しているという命題にしがみついていたからではないかと思います。
元夫のほうが20歳年上だったので、「この人が70歳まで生きればわたしは50歳。くろすけとはそのあとしか一緒にいれないのか・・・でも、90歳まで生きたらどうしよう」などという、恐ろしく自己中心的なことを考えていたにもかかわらず、自分に嘘をつき続けていました。
だから、その時期のわたしはとても不安定だったし、何かあるたびにくろすけの手を振りほどこうとしてしまっていました。くろすけがいるからわたしは自分に嘘をつかなければいけないのだから、くろすけがいなくなれば。元夫との生活に今までだってがまんできたんだから、と。でも、くろすけは絶対にどこにも行かず、いつもそこにいてくれました。
あるとき、いつものようにわたしが「くろすけとは別れる」と大騒ぎを演じたことがあります。別れる、といいながらもわたしにはくろすけが必要で絶対に別れられないと頭の後ろからもう一人の自分が必死でささやいて来ていました。そして、くろすけもわたしのことを絶対にあきらめなかった。
本当にうれしかったです。
なんでわたしはくろすけと一緒にいたいにもかかわらず、ゆれ続けてしまうのだろうと本当に情けなかったです。そして自分にくろすけと一緒にいたいのだと言い聞かせるため、左耳の上のほうにピアスの穴を二つ開けました。
そしてくろすけに今度会ったらダイヤのピアスを買ってほしい、と頼みました。くずダイヤの安いものでいいから買ってほしいって。自分の心の中では婚約指輪の代わりのつもりでした。ずっと一緒にいるという自分の気持ちをそういう風にして自分の体に記したかった。くろすけに属するものを自分の体の一部としていつも持っていたかった。でも、それを口にするとなんだか自分の思いをくろすけに押し付けるみたいな気がして、いえませんでした。
でも、くろすけも同じことを考えていてくれて、それがあるとき会話の中でわかってとてもうれしかったです。
くろすけが買ってくれたのは、ティファニーのダイヤのピアスです。わたしが好きなデザインのものをいくつかくろすけに伝えて、くろすけが選んでくれました。これを買うためにくろすけはそのとき年末年始に臨時のアルバイトをしました。そして2006年のバレンタインデー直前にくろすけの手で耳につけてもらいました。(←バレンタインデーまで待てなかった二人です。笑)
それ以来はずしたことがありません。ずっと左耳につけています。
これからもずっとつけていると思います。
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これにまつわる笑える話もあるんだけど。それはまた。